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朝井リョウ「武道館」のサイン本をもらったので、感想を書くよ!

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図書館の企画で、朝井リョウの小説「武道館」のサイン本を頂きました。(ちなみに、企画というのは本の推薦ポップを描こうというものでした)「武道館」はアイドルをテーマにした作品で、実在のアイドルのメンバーやそのスキャンダルが散りばめられており、アイドル門外漢でも知ってるネタにニヤリとさせられます。主人公がアイドルで、しかも武道館を目指しているとなれば、当然Negiccoファンの私も見逃さないはずがなく、単行本が発売されたタイミングで読んでいました(Kindle版で)。今回、このタイミングでちょっと読み返してみたので、簡単に感想を記してみようと思います。この作品、2016年にはJuice=Juice主演でドラマ化されることが発表されたので、再び注目を集めております。割とネタバレしてます。

 

目次

朝井リョウ遍歴

ついでなので、簡単に私の朝井リョウ遍歴を書いてみようと思います。私にとって初めての朝井リョウは「桐島、部活やめるってよ」です。といっても、映画版ですが。作品としても評判でしたけど、このときは確か橋本愛目当てで観賞しました。ただ、これがすごく良くて。キネカ大森で再上映されたときは、同時上映された作品を間にはさんで6時間以上劇場に居座りましたからね。そして、せっかくなので原作も、と思って書籍も手に取りましたが、正直映画の方が好きです。この辺のことを書くとそれだけで一つの記事にできそうなのでやめておきますけど。話を戻します。「桐島、部活やめるってよ」きっかけで朝井リョウを知ったわけですが、別に特にファンなることもなく、あとは直木賞受賞作の「何者」を読んだ程度です。この作品を読んだときは、私も含めて周りの人たちが進路について考える時期と被っていたので、「就活」が舞台の「何者」はなかなかグサッときました。そして今回の「武道館」。というわけで、別に全作読破するほどではないけれど、好きな作家の一人という感じです。

武道館

さて、ようやく武道館の話です。あらすじはこちら。

【正しい選択】なんて、この世にない。

結成当時から、「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。
独自のスタイルで行う握手会や、売上ランキングに入るための販売戦略、一曲につき二つのパターンがある振付など、
さまざまな手段で人気と知名度をあげ、一歩ずつ目標に近づいていく。
しかし、注目が集まるにしたがって、望まない種類の視線も彼女たちに向けられる。

「人って、人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろう」
「アイドルを応援してくれてる人って、多分、どっちもあるんだろうね」

恋愛禁止、スルースキル、炎上、特典商法、握手会、卒業……
発生し、あっという間に市民権を得たアイドルを取り巻く言葉たち。
それらを突き詰めるうちに見えてくるものとは――。

「現代のアイドル」を見つめつづけてきた著者が、満を持して放つ傑作長編!

 

 *Amazonの商品紹介より

主人公の日高愛子は「NEXT YOU」のメンバーのひとりです。幼いころから歌って踊ることが大好きだった高校3年生で、周りが進路を考えるなか、自分は「今の仕事を続ける」と決めていました。愛子にはもう一つ好きなものがあって、それが幼なじみの大地。同じマンションに住んでおり、誕生日などは家族ぐるみで祝うほどの仲。で、愛子と大地がお互いに惹かれていき、ついには結ばれるのが世間にばれてしまいます。さらに、同時期に他のメンバーがヘアメイクの人と付き合っているのも発覚してしまうのですが、これが「NEXT YOU」の念願の武道館公演が決定した後だというのが運の尽き。2人は「NEXT YOU」を脱退し、武道館公演もおじゃんになってしまいました。

ストーリーは以上のような感じです。アイドルファンの私の視点からは、批判される握手会商法について愛子が悩み、その相談を受けた大地の言葉が印象に残りました。

 「お金を払うって、自分が何を欲しがってるのか、自分が何だったら満足するのか、すげえ考えるしすげえ選ぶってことじゃん。金も払わないで、何でもある中から手に取り続けてたらさ、そりゃ、自分がどんなヤツかってわかんなくなるよ。金払ってなかったら、期待外れのモンでも、まあいいかってなっちゃうし。めっちゃ良かったモンでも、ラッキー、くらいだし。どっちも同じくらいの距離にあるっつうか」

 

「愛子は、CD売って、いろんな人たちを悩ませてる。自分はCDだけが欲しいのか、握手だけしたいのか、どっちもいらなかったのか、どっちもほしかったのか、何回握手すれば満足するのか、どれだけ握手しても満足しないのか、音楽が好きなのか、アイドルが好きなのか、どんな売り方だと許せないのか……自分がどんなヤツかって、いろんな人に考えさせてるだろ。それってすげえなって俺は思うよ」

私、過去にCDを何枚も買うことについてちょっとだけ書いています。アイドルファンの方々は色々と葛藤しながら、様々な理由で「それでも同じCDを何枚も買う」という決断をしているのだと思います。そして、アイドル本人だって、CDの売り上げを伸ばすためなら何やっても良いと思っているわけでもないでしょうし、ファンのことを「バカみたいに同じCDを買っている金ヅル」だなんて思っていないはずです(これは私の願望ですが)。批判する人って大体よそ者だったりするわけで、アイドルに群がるオタクたちを気持ち悪がって、アイドルも含めてやり玉に挙げている印象ですけど、その根本には十人十色の動機があるんだぜ!ま、ドルオタの間だけでCDが売れて、イベントに来る客がドルオタがほとんど、という状況は健全ではないのかも知れないですが。特にそのアイドルが全国区で売れてほしいのであればなおさら。

highconsciousness.hatenablog.com

 

「だって、短く簡潔に自分を表現しなくちゃいけなくなったんだったら、そこに選ばれなかった言葉のほうが、圧倒的に多いわけだろ」

「だから、選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表してるんだと思う」

「たった一四〇字が重なっただけで、ギンジとあいつを一緒に束ねて片付けようとするなよ」

「俺、お前はもっと、想像力があるやつだと思ってた」

 

これは同じく朝井リョウの「何者」の中で、主人公が就活を通じて知り合った、いかにも「意識高い系」な人のツイッターの内容について話しているときに、主人公が先輩に言われた言葉です(ギンジは、今は仲違いをしてしまっている以前の演劇仲間)。一見同じように見える人でも、そこに至るまでにはそれぞれの考えがあって、その考えっていうのは全然別物だったりするわけですよね。そして、そんな自分をもっと良く知って欲しいという思い、承認欲求というのを私も含めて誰もが持っているはずです。その表現方法として文字にすること絵にすること、あるいは音にしたりと色々あります。アイドル現場に行って、アイドルと握手したり喋ったりして認知してもらうのも、承認欲求の表れかもしれませんね。表現するやり方も場所もたくさんある今の世の中って本当に良いなあなんて思います。ただし、その分受け取る側にもそれなりにスキルが求められるようになりましたが。

話が逸れましたが、「何者」も「武道館」も、自分が何を好きなのか、何が嫌いなのか、最終的に何を「選択」するのかというのを問いかけている点で共通しています。特に、「武道館」では「恋愛」と「歌って踊ること」という、普通の人だったら両立するはずのことを主人公に選択させていて、それをこなしているアイドルたちは、小説の言葉を借りるならばまさに「新人類」です。アイドルの恋愛禁止に意見すると、基本的にはNegiccoの単推しである私からしたら、恋愛なんて自由にすれば良いと思うんですよね。メンバーへの思いは「ガチ恋」に繋がるものではなくて、「応援」したいという気持ちが強いです。だから、例えばメンバーが結婚したとしてもショックはショックですけど、応援をやめるきっかけにはならないと思います。自信はないけど。むしろ、結婚がきっかけで活動中止になったとしたら、そっちの方がショックだろうな。

 

 

と、感想というか、本を読んで考えた事をダラダラ書いてるだけになってしまいました。物語の最後には、朝井リョウが考える「アイドルの理想の世界」が描かれていて、これまた、ドルオタが色々と意見したくなるであろう内容です。またアイドルファンでなくとも、人生における「選択」がテーマになっていて面白いので、一読の価値はあります。おすすめです。最後に「NEXT YOU」のメンバー碧が作中で残していったパンチラインを紹介して締めたいと思います。

「正しい選択なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択、しか、ないんだよ」

「何かを選んで選んで選び続けて、それを一個ずつ、正しかった選択にしていくしかないんだよ」

 

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