アイドルを中心に、特典券と抱き合わせにすることによってCDの売上枚数を稼ぐ売り方が定番になっている。AKB48の登場によって世間に広く認知されており、「握手会商法」「AKB商法」と揶揄されてきた売り方である。
2017年2月に精査内容の具体例が発表された。これについては次のエントリーにまとめてある。
[aside type=”warning”] オリコンの精査内容が開示された。アイドルのCDを何枚も買う意味は?[/aside]
[aside type=”warning”] 【2017/9/8】オリコンの集計ルールが改定されたけど、そもそもCDはオワコン。[/aside]
目次
影響を受けたアーティスト
虹のコンキスタドール
私立恵比寿中学
また、この問題、リリースが集中しているハロー・プロジェクト界隈でかなり盛り上がっているようだから、ハロプロ関連作についても追記しておく。
カントリー・ガールズ
9/28日に発売されたカントリー・ガールズのシングル「どーだっていいの / 涙のリクエスト」はオリコン集計結果では25,150枚だが、ビルボードでは37,395枚となっていて、1万枚以上の差がある。

アンジュルム
アンジュルムが10/19に発表したシングル「上手く言えない/愛のため今日まで進化してきた人間 愛のためすべて退化してきた人間/忘れてあげる」はビルボードによる集計では5.2万枚であるのに対し、オリコンによる集計では3.1万枚。なお、順位についてはともに週間3位であった。


Juice=Juice
Juice=Juiceが10/26日にリリースした「Dream Road~心が躍り出してる~/KEEP ON 上昇志向!!/明日やろうはバカやろう」は、ビルボードチャートでは約6.0万枚を売り上げ3位にランクイン。一方でオリコンチャートにおける集計では3.2万枚で5位という結果であった。


℃-ute
℃-uteが11/2に発売した作品「夢幻クライマックス/愛はまるで静電気/Singing~あの頃のように~」はビルボード発表では96,827枚。オリコンでは58,277枚。ランキングは共に2位であった。
夢幻クライマックス/愛はまるで静電気/Singing~あの頃のように~(A)


集計の変更点について
・予約イベント等は商品の発売前3ヵ月以内に開催されたものとし、各対象商品は予約イベント開始時点で、発売予定日およびタイトル名(仮タイトルを含む)の情報が一般向けに解禁されているものとします(平成28年5月30日以降の発売作品より適用)。・アーティスト稼働による、予約および即売イベント売上のランキングへの反映に関しては、社会通念で認められる範囲とし、1人あたりの購入枚数や商品内容・形態数等も鑑みて精査しております。
- 予約イベントをやるのであれば、発売日と(仮でもいいから)タイトルを決定した上でやらないとチャートに反映しない。
- アーティスト稼働のイベントをやるなら、1人で何枚も買う人もいるからその辺はオリコンの判断で精査しますよ。
ってこと。
この変更によって、握手会やチェキ会などの販促イベントで売上枚数を稼いでいた多くのアイドルが影響を受けた形となった。
特に、虹のコンキスタドールに関してはビルボードのセールスチャートを見ると推定売上枚数が34,264枚とあるから、2万枚以上も「精査」されたということになる。
これまでも集計方法の変更はあった
集計方法というのは時代の変化に伴って変化を遂げている。(例えば、LPチャートなんてのはとうの昔に終了している。)
そして、いわゆるアイドル商法が一般的に行われるようになった以降にも、集計方法の改定は行われてきている。
平成27年4月からはミュージックカードと呼ばれる、ダウンロードコードの記載されたカード商品の集計は対象外になっている。また、同年6月からはコンサートチケットとセットで販売されたCDも集計対象外である。
そんなわけで、これまでも状況に応じて売上枚数の集計方法は精査してきた経緯はある。
売上枚数を気にする人がどれほどいるのか
このように、オリコンチャートにおけるCDの売上枚数の集計方法が変更になったわけであるが、個人的にはその影響は小規模なものだと考えている。
確かに、アイドルにおいては発売日をずらしてまでデイリーチャートの上位に食い込もうとするグループもいる。順位や枚数というのは分かりやすくそのアーティストの注目度を表現することができるかもしれない。しかし、「オリコントップ5」という箔付けだけで新規の人に耳に届くかというと微妙なところである。
私は某アイドルグループの同一タイトルを何枚も買った事がある(といってもせいぜい数十枚程度だが)。当然自分用に1枚持っていれば十分であるから、余ったCDについては買い取りに出すか、周りの人に配って回っていた。ところが、CDを配るときに「オリコン◯位だから、結構売れてるんだよ!」という言葉を添えたところで、せいぜい「へー、意外に売れてるんだー」がいいところである。
「同じCDを一人が何枚も買ってるから、オリコンチャートは意味がない」というのは既に多くの一般の人が抱いている印象で、今更集計に変更を加えたところで意味がないのではないかと思う。
そもそも今回の変更については、枚数だけを順位に反映させているオリコンチャートが枚数を精査してどうすると思ってしまう。
また、偏った書き方になってしまうかもしれないが、現在のオリコンチャートは「アイドルとヲタクの頑張りが数字となって現れるランキングである」という側面がある。そういった意味では今回の変更は、ヲタクのモチベーションを下げる要員にはなるかもしれない。
枚数だけに依存しないランキングも存在する
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アイドルだって変わってきた
集計方法の変更以前にも、アイドルの運営側の考えも変わってきている。例えば、「Stereo Tokyo」というアイドルグループが2016年8月に発表したEPはCDでの販売をせず、ダウンロード配信のみである。
また、「わーすた」というアイドルはメジャー1stシングルのリリースについて、全国流通盤がCDにミュージックビデオを収録したBlu-rayを加えた2枚組という1形態のみの展開となっている。通常、アイドルのCDはカップリング曲やジャケット写真を何種類も用意して販売するのが一般的であるから、最近のアイドルとしては異例である。
このように、ただCDを売れば良い(=オリコンで1位になる)という状況から抜けだそうという運営の考えは随所で見ることができる。
まとめ
オリコンの集計方法の変更によって、リリースイベントを開いて1人に何枚も買わせる作戦は通用しなくなってくる可能性がある。今後は売上枚数に固執せずに、売れるために、多くに人々に届けるにはどうすれ良いかを考えていかなければならないのだろう。逆に、それが出来ないアイドルは淘汰されていくはず。まあ、私の仕事ではないけど。
個人的には現在の「リリースイベント」「フリーミニライブ」「握手会」といった文化がなくなるのは寂しいと思う。ふらっと立ち寄ったショッピングモールで見かけたアイドルのパフォーマンスに衝撃を受けるということは大いに起こりうる事だし、CDを買えばそんなアイドルたちと触れ合えるって魅力的なこと。可愛いし。あと、握手するためにイベントに参加する際にも「一応CDを買っているんだ」という自分の中での言い訳もできる(笑)。
ヲタクになる前とヲタクになった後の金銭感覚 pic.twitter.com/mQIOSmyaYl
— ぺろりん先生 (@peroperorinko01) 2016年3月9日